書いた人:tea

 中学校の担任をかれこれ10年以上務めた。最初はうまくいかなかったが、エンカウンターやQ Uを学び、試し、うまくいったことで自信がついた。最終的には自治的なクラスづくりを志した。

 小学生もそうだが、特に中学生になれば、自分たちだけの力で学級の活動を全て行うことができる。そのために行ったことは、「あなたなら、これくらいできるでしょ。やってみなさい。」と声をかけることだ。実際にやってみて、うまくいけば、「ほら、言ったとおりでしょう。あなたならもっとできるよ。」と背中を押す。うまくいかなかったことなんて、実はほとんどない。だって、どの生徒もそれだけの力をもっている。結局はとてもシンプルなことで、生徒が挑戦する、うまくいく、認める、更に挑戦する、という正のスパイラルを回し続けるだけだ。学級委員でも、班長でも、行事の実行委員でも、係活動でも、どんなことでも期待を伝え、権限を渡し、努力を認めた。

 できる限り自分が前に出ないようにした。生徒が挑戦する際は、できる限り一緒にいないようにしていた。担任が教室にいることで、生徒が頼ってしまうと考えたからだ。わかりやすい例では、体育大会も、合唱コンクールも、練習中には一緒にいないようにした。「先生がいなくても、自分たちだけでここまでできた」と生徒が言っているのを、とても誇らしく思った。

 毎日の終学活では、生徒から活動の報告を聞き、「あなたたちは本当にすごい」、「自分たちの力でどんなこともできるね」と価値づけを繰り返した。休み時間や放課後には、それぞれの活動で頑張っていた生徒を直接的に承認し、また、他の生徒との会話で間接的に承認した。

 こう言った学級経営をすることで薄情な担任だと思われるかもしれない、そんな心配は杞憂に終わった。私が隠れて見ていること、(楽観視しつつも)職員室で心配していることを、上手に伝えてくれる副担任の先生たちがいた。合唱コンクールなど、全く練習に関わっていなかったのに、「先生に最優秀賞を届けたい」と生徒が言ってくれた。生徒から離れれば離れるほど、生徒からの信頼が増していくという、不思議な体験でもあった。

「先生の手のひらの上を転がされて、何でもかんでも自分たちでできるようになってしまった。先生に楽をさせてしまった。」、そう学級委員が笑いながら伝えてくれたあの日が、担任生活のハイライトだ。